こんにちは。開発運営支援のゲームエンジニアの立福です。CEDEC2026では「ゲームシナリオライターを支援するAIツール開発の実践~設計とプロンプトの工夫~」というセッションを行いました。ご参加・ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。
当日の資料はこちらです。
質問への回答
こちらのフォローアップ記事では、質疑応答とAsk the Speakerでいただいた質問へ改めて回答させていただきます。
Q. セッションで紹介されたツールの実行時間はどのくらいでしょうか?
A. セリフ作成支援ツール、方言監修ツールともに全体の実行時間は20秒程度です。AIを1回呼び出すだけなので高速に動作します。
講演中では詳しく説明できませんでしたが、キャラクター設定のように更新頻度が低いデータは、事前にAIで必要な情報だけを抽出し、Pythonコードに埋め込んでいます。ツールの実行時に毎回Confluenceから取得することもできるのですが、AIへ長い文章を入力して必要な部分だけ出力させるので、待ち時間が大きくなってしまいます。このような情報抽出はAIが得意なタスクですが、現在のAIは一文字ずつ出力する仕組みになっているので、長い文章を出力するには非常に長い時間がかかります。キャラクター設定を抽出する場合、出力が終わるまで1、2分かかってしまい、これを毎回実行するのは現実的ではありません。そのため、変更が少ない情報は事前に整理して埋め込む設計にしています。
一方で、セリフ作成支援ツールで使う「単語リスト」のように常に最新版を参照したいデータに関しては、ツール実行時にConfluenceから取得して、Pythonコードでパースする実装にしています。
Q. DifyのコードノードでPythonのコードに埋め込んでテキストを参照する方法は、テキストの分量が多くなると困りませんか?
A. Pythonのコードに埋め込む方法は便利ですが、埋め込む分量が増えると管理が大変です。現状はツールでPythonコードを自動生成しています。他のテキストを参照する方法として、DifyからGoogleスプレッドシートを参照する方法もおすすめです。
Q. シナリオ監修に向いていると感じるAIモデルは?
A. 試した範囲では、GPT-5系モデルが最も適していると感じています。シナリオを分析させたときに、セリフのニュアンスやキャラクターの感情を正しく理解し、詳細に分析結果をまとめてくれる能力が高いようです。また指定したフォーマット通りに出力させたときの忠実度が高く、使いやすい点も長所です。Claude系モデルはコーディングエージェント領域での強みが顕著になってきたので、ゲームシナリオ分析のような汎用言語タスクにはGPT-5系モデルを中心に採用しています。
Q. AIツール運用で月あたりの使用料金はどの程度でしょうか? 使用者に制限は設けていますか?
A. 具体的な金額はお答えできませんが、非常に低コストで運用しています。今回紹介したツールは全自動で大量のシナリオを常時分析し続けるようなものではなく、シナリオライターが執筆時に手動で呼び出すツールです。そのため、プロジェクト全体の呼び出し回数は月に数百回程度にとどまり、API利用料も月額数千円程度に収まる範囲です。そのため、社内での制限は特に設けていません。
Q. ローカルAIの利用も検討されましたか?
A. 今回はクラウドのAIのみ利用しています。毎月数万回以上呼び出すタスクならローカルAIの利用を検討するのですが、今回のツールは呼び出し回数が毎月数百回程度なので、性能の高いクラウドAIを採用しました。シナリオ分析のようなタスクでは、少しでも性能の高いモデルを使いたいという理由もあります。
Q. プロジェクトへ要望のヒアリングをして、新しいツールの開発を行なっているのでしょうか?
A. 基本的にはプロジェクトから私の所属するチームへ依頼があり、それに対応する形でツール開発を行なっています。
Q. プロンプトをAIで生成しているとありましたが、どのような感じで作っているのでしょうか?
A. AIに要件を伝えて最初のプロンプトを生成します。生成したプロンプトでテストを行い、検出がうまくいかなかったものを追加でAIに与えて、プロンプトを修正しています。特に誤字検出のプロンプトの調整を何回も行いました。ゲームシナリオの口語表現を厳密に誤字検出すると検出が多くなりすぎるので、本当に誤字であるものだけ検出するように調整を加えています。
Q. シナリオがキャラクター設定と合っているかチェックする際、キャラクター設定がゲーム進行によって変化していくケースにはどのように対応していますか?
A. 今回紹介した事例では、初期のキャラクター設定のみを利用しています。ご指摘のとおり、ゲーム進行に伴ってキャラクターの成長や心境は変化していきますが、そうした変化を設定資料側でタイムリーに更新・管理し続けるのは難しいため、AIによるチェックも現状は困難です。そこで現在は「まずシナリオ側から最新のキャラクター設定を作り出す」という逆のアプローチを検証しています。具体的には、AIで最新のシナリオを分析して初期設定との差分を抽出し、キャラクター設定の更新候補としてライターに提示する仕組みです。このようにシナリオをベースにキャラクター設定の更新を補助することで、「定期的に更新されたキャラクター設定」を用意し、次のシナリオチェックに活用していくサイクルが実現できないか検討しているところです。
最後に
今回のセッションでは、シナリオライターの執筆をサポートするAIツール開発の事例を紹介しました。執筆の主役はあくまでライターなので、セリフを直接AIに生成させるのではなく「執筆に使える単語の候補を出力する」「方言の監修を行う」「誤字を指摘する」などのサポートに特化した機能にしています。ライターはセリフ作成時にアレンジを行いたいので、セリフを直接生成するよりも、執筆に使える材料を提供されるほうが助かるというニーズに合わせたツールとなっています。現場のライターが執筆に集中できる環境づくりに向けて、本セッションの内容が皆様の参考になれば幸いです。
