【CEDEC2025 フォローアップ】ブランド力アップのためのコンテンツマーケティング~ゲーム会社における情報資産の活かし方~


広報の鷲山です。「Cygames Magazine(サイマガ)」編集長を務めています。

CEDEC2025では「ブランド力アップのためのコンテンツマーケティング~ゲーム会社における情報資産の活かし方~」というタイトルで発表しました。ご参加・ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。

当日の資料はこちらです。

こちらのフォローアップ記事では、講演後のAsk The Speakerで聴講者の皆様から寄せられたコンテンツマーケティングの課題について、その解決のヒントをお伝えします。

【課題】発信できそうなネタを探すのが大変

【解決】「ヒト・コト・モノ」の枠組みで会社の魅力を発見する


ネタを探す際は、会社の「ヒト・コト・モノ」に注目してみましょう。
「ヒト」とはスタッフに注目することを指します。社内で「会社のビジョンを体現している人」を見つけて話を聞いてみると、有益な情報や新たな企画のヒントが得られるかもしれません。
また「コト(事業や仕事)」や「モノ(サービスやプロダクト)」には、立ち上げ時の想いが込められているはずですから、担当者や関係者に話を聞いてみると発信できる情報が見つかるのではないでしょうか。

開発スタッフに話しかけるきっかけがないという方は、まずは日常業務の中で広報・編集担当者自身が会社のヒト・モノ・コトに目を向け、「良いところ」や「すごいところ」を発見してみてください。日報やアイディアノートを書いている方は、感謝していることを書いてみるのも良いと思います。
例えば、デバッガーのフィードバックが鋭いと感じた場合は、デバッガーへの取材企画に繋げられます。また、オフィスがいつも清潔だと感じた場合は、総務スタッフがその仕組みづくりをしているからだと考えられるため、総務への取材企画に繋げられます。

このようにコツコツと会社の魅力を発見していくと、ネタに困ることが減っていきます。ネタを集め、実例を交えながら会社の「世界観」を社内外へ発信し、会社自体のファンになってもらえるようにしましょう。

【課題】社内で「バズらないと発信する意味がない」と思われがち

【解決】編集コンセプト・読者のメリットを整理・説明し、オウンドメディアの価値を理解してもらう

講演で触れた「『バズるか』だけの発想をしない」という話を、もう少し詳しくお伝えします。

バズることだけを重視してしまうと、会社のビジョンや歴史、文化といった本質的な価値を伝える機会が失われてしまいます。
多くの人の注目を集めそうな話題がバズを発生させますが、広報や編集担当者がこのような話題ばかりを重視すると会社の知られざる魅力が世の中に伝わっていきません。例えばニュースや伝記では、華やかで突出した偉業が取り上げられることが多く、確かに目を引きます。しかし、実際には「当たり前のことを当たり前にやり続ける真面目な人や真剣な人」がいてこそ、会社と社会は成り立っています。

多くの人に注目されるような情報発信をしてバズを起こすのはもちろん大事ですが、広報や編集担当者は一生懸命に取り組んでいる多くのスタッフの努力が見える、日常に根ざした情報を社内外へ伝承していく役割もあるのではないでしょうか。このような情報が会社の本質的な価値を伝える資産になり、強い組織づくりや長期的なブランド構築に繋がると考えています。

必要な人に必要な情報を届けることには、意義があります。広報や編集担当者は、ターゲットとなる読者が記事を読んだ後にどのような気持ちや印象を持つか「読後感」を設定し、どのような価値を提供できるか言語化をしてみましょう。

「Cygames Magazine」の主な読者は、「求職者」と「ファン」です。
求職者層はファン層と比べると数が少なく、採用情報はバズりにくい傾向です。就活のライバルが増えるので、求職者自身も積極的にシェアしづらいという事情もあると思われます。それでも求職者に向けて、自分が働くイメージを持てる情報や、入社後のギャップを減らす情報を提供する必要があります。

バズるのは難しいですが、思いがけず多くの表示回数を獲得することもあります。実績(講演スライドp.83)でご紹介した通り、採用情報においても読者にとって価値ある情報発信を心掛けた結果、ファン向けの記事に並ぶ反響を得たケースがありました。
会社と求職者の双方にとって最適な採用にするためにも、読者に受け入れてもらいやすい採用コンテンツづくりをおすすめします。

一方でファン層には、多くの方に興味を持っていただけるバズりそうな話題を提供しやすいです。しかし、私たちはまだ世の中にあまり知られていない技術や職種に関する情報もお届けしたいと考えています。例えばファンの方々の関心が高いキャラクターイラストやシナリオ以外にも、ゲーム開発には魅力的な技術や職種がたくさんあり、知られざる魅力をご紹介することでファンの方に作品をより深くお楽しみいただける可能性があるからです。

このような情報については、いきなりバズを狙うのではなく、情報が「ない」状態から「ある」状態にし、まずは一部の熱心なファンの方に知っていただく努力が必要です。技術や職種に関する情報の露出と認知を増やしていくのは、長い目で見て会社や業界発展のメリットがあるのではないでしょうか。

ターゲットとなる読者を明確にした情報発信は短期的な話題性が生まれにくいかもしれませんが、長期的には確実に会社のブランド力向上に寄与します。
「バズらないと発信する意味がない」と思われてしまった際には、自分たちの編集コンセプト・読者のメリットを整理・説明し、バズに頼らない情報発信の意義を理解してもらいましょう。

【課題】コンテンツマーケティングが会社のブランド力向上に繋がると説得するのが難しい

【解決】KGI/KPIを設定し、ステークホルダーとの関係を構築・維持していく重要性を共有する


社内の理解を得るには、KGIやKPIを設定し、コーポレートブランディングやパブリックリレーションズ(PR)、コンテンツマーケティングの活動を経営機能の一つとして認識してもらい、成果を出すためにやり抜く必要があります。そして、オウンドメディアを運営する際は、KGIに基づいたメディアのコンセプトを設定する。コンセプトに必ず読者のメリットを盛り込むことで、より良い反響が得られるようになります。
長期的なブランド力の向上のために、会社自体の世界観をお伝えし、共感・応援してくれる方々との関係を構築・維持していく重要性を社内に共有していきましょう。


自社のブランド構築ももちろん重要ですが、パブリックリレーションズ(PR)の「公衆の利益に奉仕する精神」という視点も忘れてはなりません。

「Cygames Magazine」では、ステークホルダーとの関係構築・維持や業界発展を意識した情報発信をしています。「会社の等身大のストーリー」を伝えることが誰かの仕事の役に立つかもしれません。また「開発スタッフの想い」を伝えることが誰かを勇気づけるかもしれません。コンテンツマーケティングでは読者への価値ある情報提供が、結果的にブランド力の向上に繋がるともいわれています。
社内での説得が難しいと感じている方々のヒントになれば幸いです。

最後に

継続的な発信をするには、広報や編集担当者が「会社の様々な情報が会社の世界観をかたち作る要素である」と認識することです。また、これらの情報を収集・整理し、ブランド力を高める資産に変えていく意識も大切です。
「継続は力なり」という言葉の通り、地道な信頼の積み重ねがブランド力の向上に繋がります。

それぞれの会社のブランド力が向上すると、さらに業界全体が発展していくのではないでしょうか。私たちもまだ道半ばにあります。一緒にコンテンツマーケティングの可能性を広げていきましょう。