【CEDEC2025 フォローアップ】大規模言語モデルを活用したゲーム内会話パートのスクリプト作成支援への取り組み


こんにちは。開発運営支援のゲームエンジニアの立福です。CEDEC2025では「大規模言語モデルを活用したゲーム内会話パートのスクリプト作成支援への取り組み」というタイトルで発表を行いました。ご参加・ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。

当日の資料はこちらです。

質問への回答

こちらのフォローアップ記事では、講演中・Ask the Speakerなどでいただいた質問へ改めて回答させていただきます。

Q. クラウドのAPIを複数回呼び出すことになりますが、コスト面では大丈夫でしょうか?

A. セッションで紹介したアプローチではクラウドのAPIを複数回呼び出して多数決を取るため、呼び出し回数自体は多くなります。しかし運営中のスマートフォンゲームで毎月リリースされるシナリオの数はある程度限られるため、現場での呼び出し回数はそこまで多くありません。一番多く呼んでいたのは、私が機能開発を行っていたタイミングでした。機能のリリース後の呼び出し回数はかなり少なくなっていると思います。

Q. セッション中に出てきた「温度パラメータ」とは何でしょうか?

A. 温度パラメータは大規模言語モデルを呼び出す時に渡す値です。低いほど出力が安定して、一貫性のある出力が得られます。高くなると出力が多様で創造的なものになると言われています。今回は正解率の測定のために安定した出力を得る必要があったため、温度パラメータはゼロで利用しています。

Q. セリフに対応したモーションを選ぶ機能について質問です。プランナーの作業時に一つのセリフに対して、モーションを複数設定しているということでしたが、AIの推論でもセリフによって判断して1から3個出るようになっているのでしょうか?

A. AIの推論時にセリフによって個数を変えることは行なっておらず、5個で固定しています。セリフの長さや内容によってAIが出力するモーションの個数を可変にすることは可能ですが、今回はシナリオライターが一つ選ぶモーションの候補を出す、という用途だったので固定にしています。

Q. 開発した機能の導入イメージに関して質問です。ツール上でボタンを押すと結果が得られるようですが、1セリフごとに操作が必要なのでしょうか?それとも1シナリオ単位ですか?

A. 1シナリオ単位です。セッション中で紹介したシナリオ執筆ツールの「シナリオ執筆画面」にボタンがあり、それを押すとバックグラウンドで処理が開始され、数分後に結果を別画面で閲覧できるようになっています。結果画面では該当シナリオの1セリフごとのモーションの候補が確認できるようになっています。

Q. ローカルLLMの利用は考慮されなかったのでしょうか?

A. クラウドのAPIサービスの価格が十分に安価なことに加えて、性能差を考慮して、ローカルLLMは利用していません。クラウドのAPIを利用する場合はモデルの管理の手間が発生しないので、その面でも運用上のメリットが大きいと思っています。

Q. 過去に利用されたモーションとセリフの関係を利用して、モーションをAIで選ぶという話でしたが、モーションの発注時の資料を使うのはどうでしょうか? モーションの発注時には詳細な指定が行われるので、そちらのテキストから判断できそうです。

A. こちらの質問はモーション担当のアーティストの方からいただきました。モーションの発注書を使うという考えはなかったので、大変鋭い指摘だなと思いました。モーションに対応する詳細なテキストがあれば、そちらを使ってセリフに対応するモーションを求めることができると思います。数年前のモーションの発注書を全部探し出すことや、担当者ごとの発注内容の違いなどがハードルになるかもしれません。

別のアプローチとして動画を入力できるモデルの利用も考えられます。最近のGemini 2.5 Proなどのモデルはモーションの動画から細かい内容をテキストで取得することができます。モーションの動画から、モーションを説明するテキストへ変換しておいて、セリフに対応するモーションを求める、という方法も将来的には可能になりそうです。

最後に

今回のセッションではシナリオに対応したモーション、キャラクターの表情差分、パートボイスを求める機能を開発した話を紹介しました。表情差分のパートでは、運用型のプロジェクトにAIの機能を導入する際に考慮する点をいくつか紹介しました。機能の開発中からプロジェクトのプランナーに使ってもらっていたので、運用時に問題になる点を複数指摘してもらうことができました。AIの機能を開発する場合、AI自体の扱いに集中してしまいがちです。実際にはAI以外の部分も考慮して、総合的に使いやすいものを提供することが重要です。今回の発表内容が皆様の参考になれば幸いです。

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