皆さんこんにちは、Cygamesの都築です。
CEDEC2025では、「LLMを活用したゲーム開発支援と、生成AIの利活用を進める組織的な取り組み」 というタイトルで講演を行いました。ご参加・ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました。当日の資料はこちらです。
質問への回答
こちらのフォローアップ記事では、講演中にチャットでいただいた質問へ改めて回答させていただきます。
Q. バグチケット作成効率化アプリを作るときに、ヒアリングの結果すべてのチケットを参照する必要がなかったとのことでしたが、どのようなヒアリングを行った結果、どのようなチケットが不要だったのでしょうか?
バグチケット作成効率化アプリの開発にあたり、エンジニアからツール利用者のデバッグチームへ対して、現状どのようなチケットをAIに渡しているかをヒアリングしました。その結果、AIに渡すチケットが多すぎるかもしれない、と感じましたので、チケット数を削減することをデバッグチームへ提案しました。
その後、バグチケットのうち作成頻度が多いカテゴリ(例えばタイトル画面やキャラ画面など)ごとに、どのようなチケット数が多いのかについてデバッグチーム内でのヒアリングが実施されました。最終的に、起票数が多い内容についてお手本としたいチケットをそれぞれ5件程度選定し、プロンプトとして利用しています。
このように、「不要なチケットを除外する」というよりは、「必要なチケットだけを残す」アプローチを採用しています。
Q. ポジネガ判定のプロンプトで大半が例文だったように見受けられますが、プロンプトを工夫するよりも例文を多数並べる方が効果が大きいですか?
はい、今回試した範囲では、プロンプトを工夫するより例文を多数並べた方が効果がありました。今回の課題では、投稿をポジティブ/ネガティブ/ニュートラルに分類するための明確な基準やルールを定義・言語化するのが難しかっため、具体的な判定例を多数サンプルとして渡す方針を採りました。一方で、評価基準が明確に定義できる課題であれば、プロンプトを工夫した方が有効なケースもあると思います。
Q. 投稿内容のポジネガ分析について、 まずどのようにして運営しているタイトルへの投稿なのかを拾われましたか?
タイトルや略称など分析対象に関係ありそうなキーワードを選定し、キーワードにマッチしたものをフィルタする形で収集を行いました。
Q. 今回の業務効率化の事例について、元々LLMが持っている知識だけで回答できるのでしょうか?WEB検索などは利用されていますか?
基本的には、LLMが持っている一般的な知識でも十分に回答可能です。ただし、過去のバグチケット情報など業務固有の知識が必要な場面については、プロンプトとして明示的にコンテキストに含めることで対応しています。なお、Web検索など外部から情報を取得するような仕組みは、現時点では導入していません。
最後に
今回の講演では、社内のAI利活用を推進するためのガイドラインや組織構成、具体的な事例としての内製チャットアプリTaurus、LLMのゲーム開発効率化の検証事例について紹介しました。
三名での講演となりましたが、私からは「ゲーム開発の効率化には、エンジニアだけでなく利用者自身の主体的な試行錯誤が重要であり、そのためにもリテラシーを高めるための研修やガイドラインの策定などの環境整備も重要である」という点を、実際の検証事例を通じてお伝えしました。特に「何に課題を感じているか」「どのような出力があれば業務が改善されるか」といった点は、やはり現場の方々の方が的確に把握されています。だからこそ、密にコミュニケーションを取りながら、互いに手を動かして取り組んでいくことが、より良い検証には不可欠であると感じています。今回の発表内容が少しでも皆様の参考になれば幸いです。
私たちは現在、技術力と創造力を兼ね備えたAIエンジニアを募集しています。
詳細はこちらもしくはこちらをご覧ください。次世代のAI技術を開発し、一緒に未来を切り開いていきましょう!