【Cygames Tech Conference フォローアップ】ウマ娘 プリティーダービーのコンテ制作事例 ~コンテ制作専任チームの誕生とキャラクターを輝かせるコンテ術~


ウマ娘リリース以降のコンテ班の活動

「ウマ娘」インタラクションデザイナーチーム アニメーションデザイナーサイド コンテ班です。

先日のカンファレンスでは、ウマ娘の開発中に使われたコンテを元に、具体的な演出意図の解説と、コンテ班の成り立ちについてご紹介させていただきました。

アーカイブ配信はこちらになります。

講演スライドはこちらになります。

今回は主にアプリのリリース後に制作されたコンテやメインストーリーのもうひとつの大きな要素である「会話パートのカメラワーク」についてご紹介いたします。

スキルカットイン演出コンテ

レース中でキャラ固有のスキルが発動した際に再生されるスキルカットイン演出のコンテです。

公式twitterや、ゲーム内のガチャ画面などでも引用されるスキルカットイン演出は、キャラクター紹介的な役割も担う「7秒尺のキャラクターPV」でもあります。

【ヒシアマゾン】

険しい山道を軽々飛び越えるシチュエーションで、ヒシアマゾンの豪快さをストレートに表現!

制作者コメント・「女傑」にふさわしいパワフルな演出にするため、画面の疾走感を切らさず、アクティブな動作で魅せることにこだわりました。そのため、背景の設定や提案も大切にしながら作りこみを行っています。

【メイショウドトウ】

部屋をキレイにと奮起するも、うまくいかず落ち込んでしまう…それでも見上げればそこには希望の青空と、冠をかたどった白い雲…!

制作者コメント・メイショウドトウの多彩な表情を入れて、掃除でドジを重ねながらもチャーミングでにぎやかな画面にしたいと思いました。
複数の動作があるため、細かくカットを刻むことでテンポを作り、かつ何が起きているか伝わりやすくなるよう心がけました。
ポジティブな印象を伝えるため、最終的には空の冠をかたどった雲を見上げることで光が当たり、メイショウドトウの顔がより明るく見えるような展開に仕上げています。努力が報われてGⅠ制覇したドトウの栄光も暗示させています。

【[初晴・青き絢爛]テイエムオペラオー】

七福神に宝船のモチーフのみならず、飛翔、富士山、初日の出…と、元日欲張りセットを、強烈なテイエムオペラオーの個性でまとめた演出となりました。

制作者コメント・「ツッコミ不在のオペラワールド」をキーワードに演出を考えました。最初から最後までテンポを切らすことなく、コミカルな芝居を大量に叩き込むことが重要と考えました。
また各専門スタッフと細やかに打合せや作業確認を行って仕上げた七福神のパネルは、全関係スタッフの集大成の様な出来栄えになりました!なお、七福神はGⅠ7勝したオペラオーとリンクさせる狙いもあります。

【[初うらら♪さくさくら]ハルウララ】

かるた勝負で張り切るハルウララの一生懸命な表情。どうしても滑って転んでしまうけど、めげずに掴んだ当たり札に興奮隠しきれない!

制作者コメント・常にポジティブで頑張り屋なハルウララを様々な表情を盛り込むことで表現しました。
何度失敗しても諦めずに挑戦する前向きなキャラクター性に加えて、最後は喜びを全身で表現させることでハルウララのピュアな感受性が伝わる展開に仕上げました。

メインストーリー ストーリーレースコンテ

ゲーム中のレースと同様、スマートフォンの実機上でリアルタイムに描画されるストーリーレースは
コンテ段階で様々な演出の提案をし、他セクションと連携しながら映像の物語性を高めてゆく、まさに『設計図』となっています。

より質の高いゲーム体験のために様々な試行錯誤を重ねたコンテを、実際の映像と共にご覧ください。

【メインストーリー3章 東京優駿(日本ダービー)GⅠ 芝2400m】

憧れていた日本ダービー出走を前に「もしも勝てなかったら…」とプレッシャーに押しつぶされそうになったウィニングチケット。
トレーナーから「負けを怖がるのはそれだけ勝利への思いが強いから」と諭され自分を取り戻し、一生に一度の大勝負へ挑む!
部分的に3Dのレース画像キャプチャをはめ込むことで制作の効率化も狙ったコンテになっています。

制作者コメント・チケゾーを中心としたBNWの必死な表情を、これまでより多く盛り込むことで、ケレン味の強い映像になるよう意識しています。特にゴール前の競り合い、コンテにもあるエフェクトチームの制作したチケゾーの鼻水は必見です!

【メインストーリー4章 阪神大賞典GII 芝3000m】

驚異的な走りを見せたナリタブライアンが、ある時期から思うように走れなくなってしまう…
チームメイトとの絆で新たに磨き上げた走りは、マヤノトップガンに通用するのか?
「かつてのナリタブライアン」と「今この瞬間のナリタブライアン」の走りを重ね合わせながら、ナリタブライアンのキャラクターの芯である「競うことへの純粋な渇望」を力強く抽出したコンテです。

制作者コメント・新衣装をしっかり見せながら、ナリタブライアンの内面を印象深く表現することに気を配りました。
内面描写と交錯するレース展開を描きながら、ナリタブライアンの内なる気迫がマヤノトップガンに伝わる様に構成しています。
ゴール前では内面描写と現実のレースでナリタブライアンの表情をしっかり描き分けることで「それでも変わらないナリタブライアンの闘志」がユーザーに伝わる様に意識しました!

【メインストーリー5章 金鯱賞GⅡ 芝2000m】

「自分らしい走り」を模索し、答えを掴みはじめたサイレンススズカの軽快な逃げ。
ライバルたちが後方でチャンスを伺う中、追い込みのマチカネフクキタルにも勝機があるかと思われたが…

レース序盤で逃げ、レース終盤で刺す『異次元の走り』と呼ばれたサイレンススズカの並み外れた走りを「縮んでゆく影(影も踏ませない)」や「力強い旋風エフェクト」で表現。一方的なレース展開をいかにしてドラマチックに描くかを試行錯誤しながら制作しました。
制作者コメント・「異次元の逃亡者」の異名をとった、スズカの無双的な走りを表現するため、冒頭からラストに至るまでカメラワークの仕込み方を他の章とやや異なる手法で提案しました。
全体的に、CGならではのアクティブなカメラ表現を存分に活かした「格闘ゲーム」の様な印象にしたかった為、エフェクトや仕上げのポスト処理も含め、たくさんのチャレンジを重ねています。

メインストーリー 会話パート(カメラワーク制作)

コンテ班では、レイアウトの技術を活かして、メインストーリー中の会話パートでのカメラワーク制作も担当しています。
スクリプトチームによってきめ細かく制作されたキャラクターたちの演技をよりドラマチックに演出するため、カメラの動きだけでなく、キャラの目線や立ち位置の調整などにも手を入れます。また、会話の合間にどうしても欲しい「間」がある時や、それに合わせた細かい表情が欲しい時はスクリプトチームに追加の演技依頼をすることもあります。スクリプトチームとコンテ班のやりとりは「演者とカメラマン」の関係に近いものです。最後にサウンドチームが、よりシーンに最適な曲や効果音を割り当てて完成です。コンテ班とスクリプトチーム、そしてサウンドチームそれぞれが全力で会話パートのクオリティ向上に力を注いでいます。

メインストーリー5章「scenery」からいくつかシーンをピックアップしました。
カメラワークが入る前の工程と、入った後の比較映像をご覧ください。

5話「思うままに」

自分の走りを掴みきれずに苦しんでいるサイレンススズカの無力感と、スズカに協力してあげたいスペシャルウィークの心情を丁寧に捉えることを意識しました。

お互いが無言になる瞬間を描くことが演出的に非常に重要な意味を持つため、セリフの間に細かい間を設けています。スクリプトチームが繊細な表情変化を加えてくれたことにより、静かながらも見応えがあるシーンになりました。

10話「行きつく未来」

スペシャルウィークとサイレンススズカの微笑ましいやりとりを描写する前半に対して、怪しげな雰囲気を醸し出す後半のアグネスタキオン。ウマ娘という存在そのものへの問いかけも含むアグネスタキオンとトレーナーのやりとりが印象的な一幕です。

ここまでの会話シーンでは採用しなかった個性的なアングルを多用し、アグネスタキオンのトリックスター的な立ち回りを演出しました。

12話「思いを背負うウマ娘」

過労と心労から倒れてしまったトレーナーを心配そうに見つめるメジロマックイーン。ここまで培ってきたトレーナーとウマ娘の絆、信頼関係にスポットを当てたシーンです。

トレーナーがベッドに横たわってメジロマックイーンを見上げているかのような印象を、メジロマックイーンの配置とカメラワークだけで成立させています。
また、会話パートにおけるトレーナーはボイスがないため、読む人がセリフを見失わないよう、画面下部の可視性にも気を配ってレイアウトしています。

おわりに

現在も、まだ未発表のウマ娘たちのスキルカットインや、新たなメインストーリーを演出で盛り上げるために日々クオリティアップを目指し試行錯誤しています。今後もチーム一丸となって、トレーナーの皆様に楽しんでいただける演出を目指していきますので、よろしくお願いいたします!