【CEDEC 2019 フォローアップ】フォトグラメトリーとプロシージャルを用いた最新ハイエンドゲーム3DCG背景制作手法


こんにちは。Cygames デザイナー本部3DCGアーティストチームの吉冨です。2019年9月6日(金)に開催されたCEDEC 2019にて、『フォトグラメトリーとプロシージャルを用いた最新ハイエンドゲーム3DCG背景制作手法 ~ハイエンドゲーム開発の経験がない会社がいかにしてそれらを生み出したか~』という題名で講演を行いました。

聴講いただいた皆様には改めて御礼申し上げます。今回は講演のフォローアップとして、講演資料を公開いたします。また、講演後にいただいた質問への回答を述べさせていただきます。

講演の概要

本セッションでは現実の風景と遜色なく、それ故に高い没入感が得られる写実的な背景制作を課題とし、ハイエンドゲーム制作の経験がない会社がそれらを実現可能にした制作手法とノウハウをご紹介しました。

具体的には、写真から得られたデータをCGに取り込む技術(フォトグラメトリー)と、自動生成の技術(プロシージャル)の融合、また伝統的な背景制作のノウハウの活用です。
何度かの失敗を経験し、そこで得られた気づきと対策をご説明しました。

講演のポイント

本講演で伝えたかったことは3つあります。
1つ目は、ハイエンドグラフィックを目指すからといってテクノロジーに振り回されず、基本に忠実に背景制作に取り組む姿勢が大事だということ。

2つ目は、フォトグラメトリーとプロシージャルを高いレベルで融合させて写真のような見た目を目指しつつ、伝統的な背景制作のノウハウをバランスよく織り交ぜて、両者でシナジー効果を生み出すこと

3つ目は、絶対にお客様にいいものを届けたい! という熱意が、あらゆる課題を突破する原動力となること
です。

この3つのポイントをしっかりと踏まえていただき、皆さんの現場でいいコンテンツを作り日本のゲーム業界を共に盛り上げていきたいです。

講演後の質問と回答

Q:現像段階でディライトすると、PBRのルールに反することになりませんか?

A:ご質問の内容は、Physically Based Rendering(PBR)を徹底させるなら、現像段階で画像を調整する余地はないはずなのにディライトをしても大丈夫なのか、というものです。

答えとしては「PBRのルールには、可能な限り合わせるようにしている」です。

はじめはPBRのルールを100%徹底すべく、岩などをnixのカラーセンサーで計測して正しい数値を検出して現像をしていました。しかし、それでは

  • 工数がかかりすぎる
  • そもそも現実のカラーチェッカーの色と、sRGBカラースペース内のカラーチェッカーの色をすべて正しい数値に完全に一致させて現像することが難しい

との理由から、PBRのルールからやむなく少しだけ外れるということもあります。
ただし、素材を撮影する際に必ず1アセットにつき1枚はグレーカードを撮影して、Adobe Bridgeで露光量を中間グレーのRGB118に合わせるなど、最低限のことは徹底しています。

PBRについて

クオリティーを担保するためにはPBRのルールを遵守する必要があります。ルールを守っていないと、グラフィックの問題が起きたときにマテリアルが悪いのか、それともライティングに問題があるのかが分からなくなるからです。

ですが、上に挙げた運用面の理由から、やむなく外れる場合もあります。その際も、PBRから外れるとわかっていてあえてそうするのか、それともよくわからないままに迷走するのかでは全然意味が違ってきます。

以上のことから、PBRに関してよく理解し、ルールに沿っているかどうかを常にチェックできるスキルが必要になります。

最後に

Cygamesは「チャレンジ」が大好きです。

新しいモノを生み出すときに失敗はつきものです。ですが、私たちは失敗は挑戦することで得られる価値であると考えています。新規タイトル開発を通して、たくさんの価値を生んでお客様に最高のコンテンツを届けたい! という思いで制作しています。

その結果、個人もチームも大きく成長します。新規タイトル開発というクリエイターとして最もエキサイティングな現場に来ませんか?
共に世界へ!